2017年10月7日(土)ふるさと総合センター(高知・黒潮町)
開場13:30
開演14:00(16:00終了予定)
無料
※世田谷ピンポンズは劇中のどこかで歌を歌います。
演劇『びったれの証』によせて
上林の人生は、不遇なものであった。売れない私小説作家の生活は貧困そのものであり、暮らしに疲れた妻・繁子は精神を病み入退院を繰り返す。日々の生活を支え三人の子どもの面倒を見たのは、田舎から呼び寄せた女学校出たての末妹・睦子であった。そのうえ時代は、戦争から敗戦へと混乱がつづく。そのなかで、病み衰えた妻の死。
さらに追い打ちをかけるように、上林自らの二度にわたる脳溢血。二度目に倒れてからは、口や右手・足が不自由となり、病床での生活が十八年も続くことになる。
それでも、上林は書くことをやめなかった。
慣れない左手に鉛筆を握り、ときには口述筆記で作品を書いた。上林は、まさに努力の作家だった。文学にかける執念も凄まじいものであった。同時に、十八年にわたり病床にある兄を看とり、創作活動を支えつづけた妹・睦子の半生もまた凄まじいものであったといえる。
「妹を不幸にしたのは私である。私は、文学をやるために妻を犠牲にし、返す刀で妹を犠牲にしたと言われても、返す言葉がない。」と、のちに上林は書いている。さらに幼い子どもたちもいる。上林文学は、これらの人たちの犠牲の上に築かれた文学だとも言えるのである。
上林は生涯に四百編ほどの短編小説を書いた。そのうち百編余が郷里・幡多に題材をとった作品である。それは、上林文学の中軸をなしているといっても過言ではない。(随筆・評論などは千編を超える)